ディレクトリ型検索エンジンとは何か?

前回は「検索エンジンとは何か?」について解説しました。そして検索エンジンには、「ディレクトリ型検索エンジン」と「ロボット型検索エンジン」の2種類があるということを述べました。今回は、ディレクトリ型検索エンジンについて解説します。

目次

初期の検索エンジンは人間がサイトを見て登録していた

ディレクトリ型検索エンジンの最大の特徴は、人間によって編集されているという所にあります。編集員が、ウェブサイトを一つずつ慎重にチェックし、内容の正確さやユーザーにとっての有用性を評価します。ウェブサイトに問題がなければリンク集に登録されます。

このリンク集という概念は、非常にシンプルなものです。ジャンルごとに分類されたウェブページにサイトの名前と紹介文、そしてサイトへのリンクを掲載します。ユーザーがリンクをクリックすると、直接そのサイトにアクセスできるというわけです。しかし、ディレクトリ型検索エンジンは単なるリンク集にとどまらず、検索機能も備えています。

例えば、Yahoo!JAPANは創業時にディレクトリ型検索エンジンとして誕生しました。これは基本的にリンク集でしたが、重要な違いはその検索機能にあります。ユーザーが例えば「チョコレート」というキーワードを入力欄に入力し、検索ボタンを押すと、リンク集に含まれるサイト名や紹介文の中で「チョコレート」という言葉が含まれている場合、それらの情報が検索結果として表示されます。このように、ディレクトリ型検索エンジンは、検索機能を備えたリンク集として機能するものです。

1990年代後半、Yahoo!JAPANがデビューした当時、インターネットは今日のように成熟していませんでした。その初期の頃、Yahoo!JAPANのトップページは、シンプルで、ニュースや天気予報などの基本的な情報しか提供していませんでした。その時代は今ではとても有名なYahooオークションなどはまだ存在していませんでした。

インターネットが始まった当初は男性ばかりが使っていた

興味深い点の一つは、当時のウェブの主なユーザー層は男性だったことです。これは、当時のYahoo!JAPANに「ガールズ&レディース」という女性向けコーナーがあったことが物語っています。1990年代の終わりにおいて、インターネットはまだ、オタク文化やアダルトコンテンツ、オンラインカジノなどの特定の用途に限られていると見なされがちでした。

しかし、時が経つにつれ、Yahoo!JAPANは急速に進化し、様々な機能が追加されました。メッセンジャーやチャット、スポーツのコーナー、ファイナンス、テレビ番組表、旅行やグルメ、路線検索、地図、掲示板などが新たに加わり、より幅広いユーザーに対応するようになり多くの女性も使う検索エンジンになりました。その後は、Yahoo知恵袋などのサービスも登場しました。

このようにオタク的ツールであったインターネットが生活に便利な情報を発信するようになるにつれて女性の利用者比率が増えてきました。

1990年代の終わりにおいて、日本国内でのインターネットユーザーの男女比率は、男性が53.7%、女性が46.3%でした。これは、当時のインターネットが、男性中心のオタク文化やアダルトコンテンツ、オンラインカジノなどの特定の用途に限られていると見なされがちであったことを反映しています。

その後、インターネットの普及に伴い、女性のインターネット利用率は徐々に高まっていきました。2000年代には、男女比率はほぼ均等となり、2010年代には、女性のインターネット利用率が男性を上回りました。

2023年現在、日本国内でのインターネットユーザーの男女比率は、男性が47.5%、女性が52.5%となっています。これは、2000年代前半から、女性のインターネット利用率が男性を上回り続けていることを示しています。

《日本国内でのインターネットユーザーの男女比率の推移》

男女比率
1995年 男性53.7%、女性46.3%
2000年 男性52.5%、女性47.5%
2010年 男性49.0%、女性51.0%
2020年 男性48.0%、女性52.0%
2023年 男性47.5%、女性52.5%

《出典》総務省統計局「インターネット利用状況調査」

Yahoo!JAPANのトップページは、長い間ディレクトリ型検索エンジンとして機能しました。これは、カテゴリ別に分類されたリンク集で、ユーザーは特定のカテゴリをクリックすることで、そのカテゴリに属するウェブサイトにアクセスできました。例えば、「自動車」カテゴリを選択すると、トヨタや日産など、自動車関連のウェブサイトへのリンクが表示されるというわけです。このように、Yahoo!JAPANはデジタルの進化と共に成長し、多様化するユーザーのニーズに応えるために変化を遂げてきたのです。

かつてのインターネットの世界では、Yahoo!JAPANのようなディレクトリ型検索エンジンの役割が非常に重要でした。この時代、ウェブサイトがYahoo!JAPANに掲載されるかどうかが、そのサイトのアクセス数に大きな影響を与えていました。

私自身も、2006年か2007年頃、当時のYahoo!JAPAN本社が六本木ヒルズにあった時期に取材を行った経験があります。その時の取材は、Yahoo!JAPANのディレクトリ、いわゆる「Yahoo!カテゴリ」の編集委員たちに焦点を当て、彼らがどのような基準でサイトを登録するかについての興味深い話を聞きました。

《Yahoo!JAPAN本社への取材時の様子》

Yahoo!カテゴリに登録するだけでアクセス数が激増した

当時、Yahoo!JAPANのYahoo!カテゴリに掲載されるかどうかは、多くのウェブサイト運営者にとって非常に重要なことでした。掲載されれば、アクセス数が劇的に増加したからです。たとえば、掲載前は一日に1人か2人しか訪れなかったサイトが、掲載後には一日に1000人、数万人、場合によっては数十万人の訪問者を集めることもありました。Yahoo!JAPANは当時、今日のGoogleのような影響力を持つ主要な検索エンジンでした。

しかし、このシステムには大きなデメリットもありました。ウェブサイトのオーナーは自分のサイトを推薦し、登録を申請することができましたが、内容が未熟だと審査に落ちることも多かったからです。一度審査に落ちてしまうと、ウェブサイトの内容を改善しない限り、何度申請しても成功しないケースが多く、多くの運営者がこの点で悩んでいました。これは、当時のインターネットの世界で生き残るための重要な側面であり、ウェブサイトの質を高めるための努力が求められる環境だったのです。

インターネットの世界が急速に拡大し、ウェブサイトの数が増えるにつれて、Yahoo!カテゴリを始めとするディレクトリ型検索エンジンにおける登録の合格率は大幅に低下しました。特にYahoo!JAPANのヤフーカテゴリに関しては、かつては9割から8割のサイトが合格していた時代から、2007年頃には合格率が数パーセントにまで減少した時代が訪れました。この状況は、インターネットの成長と進化の一面を示しています。

Yahoo!カテゴリに登録するのにはお金がかかった

さらに、ウェブサイトの急増に伴い、ビジネス目的のウェブサイト、つまり趣味のサイト以外は、登録の審査料として5万円から15万円プラス消費税を支払う必要が生じました。一般のサイトの登録審査料金は5万円で、アダルトサイトやギャンブル、探偵などのサイトの審査料は詳細に渡る審査が必要だということが理由で15万円かかっていました。この審査料は、合格しても落ちても返金されないため、多くのウェブサイト運営者にとっては大きなリスクとなりました。落ちた場合、再審査のために再度料金を支払う必要があるのです。

Yahoo!カテゴリへの登録は元々は完全に無料でした。しかし人気が高まるにつれて、人間による手作業での登録を全て無料で行うのには限界が生じるようになりました。Yahoo!カテゴリは、昔は無料で登録を行っていましたが、ある時点からビジネス目的のウェブサイトを登録するには審査料金がかかるようになりました。この審査料を支払っても登録されないケースがあると、企業側は当然ながら不満を抱えます。支払ったのになぜ登録されなかったのか、という疑問が生じるわけです。

《企業がYahoo!カテゴリに登録をするための方法を説明するセミナー資料の一コマ》

しかし、Yahoo!JAPANの立場から見れば、これにはやむを得ない側面もあります。毎日何百件ものサイトから審査依頼が寄せられる状況では、すべてを細かく見ること自体が大変な作業です。また、登録申請の際に使用される言葉が幼稚だったり、洗練されていない場合、審査する人々も人間であり、うんざりしてしまうこともあるでしょう。時には、ちょっとでもおかしいと思える申請は見ない、ということもあったかもしれません。実際のところ、Yahoo!JAPANの内部状況は外部からは分からない部分が多いですが、審査プロセスの厳しさが逆にユーザーからの不満を生んでいた可能性があります。

編集方針に沿わないと登録されなかった

さらに、編集者の主観や運営会社の方針も、ディレクトリ型検索エンジンにおける重要な問題点です。実際、私のお客様の中にも、Yahoo!カテゴリの審査に落ちたサイトが多くありました。これらのサイトは客観的に見ても間違っているわけではなく、きちんと作られていたにもかかわらず、編集方針に合わないという理由で登録されないケースがありました。このような状況は、ネットユーザーがそのサイトを見る機会を失う結果となりました。

この問題を解決するために、私は当時Yahoo!JAPANの運営方針を徹底的に研究し、学習しました。お客様の協力のもと、落ちたサイトの特徴や審査に合格したサイトの特徴を分析し、セミナーやコンサルティングを通じて多くの方々が合格できるよう支援しました。しかし、このような努力がなければ合格は難しい状況でした。

このように、ディレクトリ型検索エンジンはその時代のインターネットにおいては画期的な存在でしたが、時代の変遷と共に、その限界も露わになってきたのです。ユーザーのニーズと検索技術の進化が、ウェブサイトの登録と運用の方法を大きく変えてきました。

このような厳しい状況の中、私自身も「ヤフーカテゴリに合格する方法」というテーマでセミナーを何回も開催しました。これらのセミナーには、全国から多くの人々が参加しました。当時のウェブサイト運営者にとって、Yahoo!JAPANのヤフーカテゴリに掲載されることは、現代で言うGoogleに掲載されるほど重要なことだったのです。

《企業がYahoo!カテゴリに登録をするための方法を説明するセミナー資料の表紙》

ディレクトリ型検索エンジンのメリット

ディレクトリ型検索エンジンのメリットには、特に有益な情報が整理されている点が挙げられます。当時のインターネットでは、ロボット検索エンジンも存在していましたが、これらは全自動でウェブサイトを登録していました。しかし、今のGoogleのような高度な技術がなかったため、管理体制は比較的雑なものでした。その結果、ロボット型検索エンジンでは質の低いサイトも多く登録されており、混沌とした情報が提供されていました。

これに対して、Yahoo!JAPANのようなディレクトリ型検索エンジンは、プロの人間がサイトを厳密にチェックしていたため、本当に有益なウェブサイトだけが整理されて登録されていました。このため、ユーザーにとってはハズレのない、信頼性の高い情報源となっていました。

カテゴリによる興味分野の探索も、このディレクトリ型検索エンジンの大きなメリットでした。たとえば、「教育」カテゴリ内の「専門学校」を選択すると、関連する専門学校のウェブサイトが表示されるようになっていました。同様に、「芸能人」カテゴリを選択すれば、芸能人のブログやウェブサイトが一覧表示されました。これらのサイトは、アルファベット順や人気順などで整然と掲載され、ユーザーにとって非常にわかりやすく、便利なシステムでした。

さらに、カテゴリ検索に加えて、キーワード検索も可能でしたが、結果は各サイトが掲載されているカテゴリページへのリンクとして表示されることが多かったです。このように、ディレクトリ型検索エンジンは、情報の整理と提供において非常に効果的でユーザーフレンドリーなシステムだったのです。

ディレクトリ型検索エンジンのデメリット

ディレクトリ型検索エンジンの消滅の理由は、そのシステム固有のデメリットが際立ってきたことにあります。現代では、このタイプの検索エンジンはほとんど使われていません。国内最大手のYahoo!カテゴリはもちろんのこと、クロスレコメンド、クロスメディアディレクトリ等の有料登録型のディレクトリはすべて閉鎖されました。Googleも一時期オープンソース型のディレクトリサービスのDmozのデータを使ってディレクトリを運営していたことがありましたが、それもYahoo!カテゴリよりも早く閉鎖されました。

これらのディレクトリ型検索エンジンが閉鎖された主な理由として、ディレクトリ型検索エンジンはウェブサイト単位でしか登録を行わないことが挙げられます。例えば、Googleのような現代の検索エンジンでは、特定のキーワードで検索すると、そのキーワードに関連するウェブページが直接表示されます。例えば「ミッキーマウス」と検索すれば、ミッキーマウスに関するコンテンツが掲載されているウェブページが直接検索結果に表示されるのです。これは非常に便利で、ユーザーはすぐに必要な情報にアクセスできます。

しかし、ディレクトリ型検索エンジンでは、このような直接的なアクセスができませんでした。もしユーザーがミッキーマウスの情報を探したい場合、ディレクトリ型検索エンジンにあるリンク集からはサイトのトップページにしかリンクがされていなかったため、ディズニーのトップページにアクセスし、そこからキャラクターのカテゴリを探し、さらにミッキーマウスのページを見つける必要がありました。ディレクトリ型検索エンジンは通常、トップページにしかリンクを張っていなかったため、ユーザーはリンク先のサイトで自分が探している情報を自分で見つけ出さなければなりませんでした。これは非常に手間がかかる作業であり、ユーザーにとってはあまり効率的ではありませんでした。

このような理由から、ディレクトリ型検索エンジンは徐々に使われなくなり、現在ではほとんど見かけることはありません。検索技術の進化とともに、より効率的でユーザーフレンドリーな方法が普及していったのです。

ユーザーは結局ロボット型検索エンジンを選んだ

ロボット型検索エンジン、特にGoogleのような現代の検索エンジンは、ユーザーが探している情報を含むページをピンポイントで検索結果に表示します。これにより、ユーザーはわざわざウェブサイトのトップページにアクセスしなくても、直接関連するコンテンツにたどり着くことができます。この進歩は、インターネット検索の利便性を大きく向上させました。

最近ウェブ業界に入った方や、個人でビジネスを展開しようとしている方々は、この変化に少し不思議に思うかもしれません。多くのウェブ関連の書籍やセミナーでは、現在でもトップページを重視するような姿勢が垣間見られることがあります。例えば、私が講師をしているSEOのセミナーでは、サイトのトップページの検索順位がどのように変動したか、またそれをどのように改善したかといった話をします。これは、昔のウェブ環境において、ディレクトリ型検索エンジンが主にトップページへのリンクを掲載していたことに由来します。そして受講者やコンサルティングのクライアントからの相談の多くが、トップページの順位を改善したいというものがほとんどです。こうした理由があるため、トップページの最適化の話が多いのです。これはディレクトリ型検索エンジン全盛期の名残とも言えるのです。

一方で、ロボット型検索エンジンの普及により、トップページ以外のページの最適化も同様に重要になってきています。このように、検索エンジンの進化に伴い、ウェブサイトの最適化戦略も変化しているのが現状です。

検索ユーザーはトップページを重視しない

インターネットでのショッピングや情報検索の際に、トップページへのこだわりはもはや必要ない時代になっています。例えば、楽天市場のサイトを見てみましょう。商品を購入する際、わざわざトップページにアクセスする必要はありません。もしチョコレートが欲しいなら、直接様々なチョコレートが掲載されているチョコレートのカテゴリページに行くか、美味しくてとても人気がるチョコレートを申し込めるページに行く方がはるかに便利です。

さらに、チョコレートの中でも特定の種類、例えばカカオ80%のチョコレートが食べたいと思う人にとっては、カカオ80%のチョコレート専用のページに直接アクセスできる方が理想的です。たとえば、カカオ80%のチョコレートを探している人は、その商品が購入できるページを見たいはずです。楽天市場のトップページに行き、食品、スイーツ、クッキーなどのカテゴリを順に押して探すのは時間がかかりますし、非効率です。

このように、現代のインターネット利用者は、特定の情報や商品をすばやく、直接見つけることを望んでいます。トップページへの過度なこだわりは不要で、むしろユーザーのニーズに応じた直接的なアクセスが求められているのです。インターネットの使い方も、このようなユーザーの便利さや効率性を重視する方向に進化していることが見て取れます。

ディレクトリ型検索エンジンは、このように様々な問題を抱えていたため、消滅してしまいました。このことは私が達がウェブを使ってビジネスを行うときに重要な教訓を示しています。それは、どんなに一時的に人気があったとしても、技術の進歩とユーザーの好みの変化を見逃してしまうと見てもらえなくなるということです。このことを避けるためには常日頃からインターネット上にどのような新しいサービスが生まれ、どれをユーザーが好むかを見守り続けることです。それがこの厳しいウェブの世界で生き残り、反映するための最低限の条件です。

次回は、ディレクトリ型検索エンジンを消滅に追い込んだ全く異なる形の検索エンジン、「ロボット型検索エンジン」について解説します。それではまた。

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ウェブマスター検定公式テキストの著者。他にSEO検定公式テキスト、世界一やさしい ブログSEOの教科書 1年生等、SEO、ウェブマーケティングの著書多数。
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