最終更新日:2025年11月17日 執筆:SEOコンサルタント 鈴木将司

ここ数年、とくに増えている相談が「X(旧Twitter)からの集客を増やしたいが、何を投稿すればよいのかわからない」というものです。「毎日ポストしているのに反応がない」「フォロワーが増えない」「おすすめに全然載らない」といった声を、業種を問わずよく耳にします。

私自身も、ほぼ毎日SNSの動きを観察し、会員企業へのコンサルティングを通じてXの運用ノウハウを蓄積してきました。今回の記事では、その経験をもとに、「Xのおすすめに掲載されやすい投稿とは何か?」を、SNS初心者の方にもわかりやすく解説します。

Xのアルゴリズムが見ているのは「関係性」「反応」「スピード」、そして「多様性」

Xの「おすすめ」欄に表示されるかどうかは、単に一つひとつの投稿の質だけで決まるわけではありません。アカウント全体を通じて、どんな人とどのようにつながっているか(関係性)、どのくらい反応があるか(エンゲージメント)、投稿してからどれくらいのスピードで反応が集まるか、そして、どれだけ「いろいろな角度」から情報を出しているか(多様性)といった点も評価に含まれています。

Googleの検索世界では、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が品質の柱としてよく語られます。SNSの世界でも、似た考え方が求められるようになってきました。「このアカウントは、実際に経験している人が話している」「専門的なこともわかっていそうだ」「長く発信を続けていて信頼できる」といった「人間らしさ」や「ブレない信頼感」が、Xの評価にもつながりつつあります。

私のクライアントの多くも、スタート時点では「投稿しても反応がない」「フォロワーが全く増えない」という悩みを抱えていました。しかし、アルゴリズムの仕組みを大まかに理解し、それに合わせて運用を少し変えていくだけで、数ヶ月後には見える景色が大きく変わっていきます。まずは、Xがどんなポイントを重視しているのかを、順番に整理していきましょう。

① 過去の行動から見た「関係性」

Xは、ユーザー同士の「関係の深さ」をよく見ています。たとえば、DMでやりとりをした相手、コメントを交わした相手、頻繁にタイムラインをチェックしているアカウントなどは、「この人とこの人は関係が深い」とみなされます。そうした相手の投稿は、自然と自分のタイムラインに出てきやすくなります。

これは、Google検索における「過去の検索や閲覧履歴をもとに結果を少し変えるパーソナライズ」にも近い考え方です。にもかかわらず、多くの企業アカウントは、フォロワーとの会話や返信がほとんどないまま、自分の告知だけを一方的に投稿しがちです。これでは、X側から見たときに「関係性が深いユーザー」が一向に増えず、表示優先度もなかなか上がりません。

② 他のユーザーからの「反応」

Xのアルゴリズムが最初に見るのは、やはり「どれだけ反応があるか」です。いいね、リポスト、返信、動画であれば最後まで見てもらえたかどうかなど、さまざまな行動がまとめてエンゲージメントとして扱われます。

とくに投稿してから最初の1〜2時間で、どれくらい反応が集まるかが重要です。短時間で多くの反応が集まる投稿ほど、「この話題は多くの人の関心を集めそうだ」と判断され、その後の露出が加速していきます。逆に、投稿してからしばらく経っても反応がほとんどない場合は、アルゴリズムが「優先的に広げる必要はなさそうだ」と考えやすくなります。

③ 投稿直後の「スピード感」

Googleが検索結果の評価に「クリック率」や「ページ滞在時間」を取り入れているように、Xも投稿直後の「初速」を重視しています。フォロワー数が少ないアカウントであっても、投稿のネタがフォロワー層に刺さっていれば、短い時間のうちにいいねや返信が集中することがあります。そのような投稿は、新しいアカウントであってもおすすめに乗るチャンスがあります。

つまり、フォロワーが少ないからといって諦める必要はありません。大事なのは、「今いるフォロワーの方が、思わず反応したくなる話題や聞き方になっているか」という点です。

④ 「多様性の確保」——同じ投稿ばかりだと評価が落ちる

ここからが今回の本題です。私は週刊SEOビデオニュースなどでもお伝えしていますが、Xは「同じ人の、似たような投稿ばかりが続く状態」を好みません。ユーザーの立場で考えれば、とても自然なことです。同じ人の宣伝ばかり続けて表示されると、「もういいかな」と感じてアプリを閉じたくなってしまいます。

私自身も、ある時期、自分のフォローフィードが特定の人の投稿で埋まりすぎて、「もう少し違う情報も見たい」と感じたことがあります。Xのアルゴリズムは、そのようなユーザーの心理をよく理解していて、投稿者の偏りだけではなく、トピックの偏りについてもバランスを取ろうとしています。

ここを理解していない企業アカウントは、「商品の宣伝投稿」だけを延々と繰り返してしまいがちです。しかし、このやり方では反応も伸びにくく、結果としてアルゴリズムからの評価も下がり、表示回数も鈍くなってしまいます。

クライアントの成功例:ダイビングスクールが伸びた理由

私が17〜18年ほどお付き合いをしているダイビングスクールのクライアントは、もともとSEOの相談から関係が始まりましたが、途中からSNS、とくにXの運用も一緒に改善してきました。その中で大きな転機になったのが、「投稿内容の多様化」です。

運用を見直す前は、「講習の案内」「キャンペーン情報」といった、いわゆる「お知らせ系」の投稿がほとんどでした。そこで、次のような方向に投稿の幅を広げてもらいました。

まずは、ダイビングの授業の様子を紹介する投稿です。これはスクールの専門性を伝える「核」になるコンテンツです。加えて、海の生き物の写真や動画を見せる投稿も増やしました。ダイビング経験者だけでなく、「海の生き物が好き」「きれいな海の写真を見るのが好き」という、より広い層にも興味を持ってもらうためです。

さらに、スクール後のバーベキューの様子や、船の上でのリラックスした時間の写真も出していきました。現場の空気感やスタッフ・受講生の表情がわかる投稿は、「このスクールは楽しそうだ」「人の雰囲気が良さそうだ」と感じてもらいやすく、問い合わせ前の心理的なハードルを下げる効果があります。海の景色や船旅のシーンなど、「旅好き」「アウトドア好き」の人のタイムラインにもなじみやすい要素を織り交ぜていくことで、接点がどんどん広がっていきました。

SEOの言葉でいえば、「関連語や共起語でテーマを広くカバーする」ようなイメージです。特定の商品だけを延々と紹介するアカウントよりも、世界観に厚みがあり、いろいろな角度から情報が流れてくるアカウントのほうが、見ていて飽きません。結果的に、アルゴリズムの評価も高まりやすくなります。

なぜ「多様性」がそこまで重視されるのか?X側の視点で考える

では、Xはなぜ多様性をそこまで重視するのでしょうか。プラットフォーム側の視点に立ってみると、その理由はとてもシンプルです。

一つは、ユーザーを飽きさせないためです。アプリの中で長く過ごしてもらえれば、それだけ多くの広告を表示できますし、利用者が離れにくくなります。Googleの検索も同じで、「このサービスは便利だ」と感じてもらえるほど、ユーザーは戻ってきてくれます。Xも、「どんな投稿をどんな順番で見せれば、ユーザーが離脱しないか」を常に考えています。

もう一つは、「推奨しやすいアカウント」を見極めるためです。特定の商品やサービスの宣伝だけに偏っているアカウントは、興味を持つ人の幅がどうしても狭くなります。その一方で、専門分野を軸にしつつ、少し隣の話題や、そこにつながる生活・人・景色なども一緒に発信しているアカウントは、接点を持てるユーザーの幅が広がります。Xとしても、「このアカウントは、いろいろな人におすすめしやすい」と判断しやすくなるわけです。

この発想は、私が20年以上見てきたSEOの「テーマの網羅性」の考え方とも非常に近いものがあります。検索に強いサイトは、一つのキーワードだけではなく、その周辺にある質問や関連テーマも丁寧にカバーしています。Xで伸びているアカウントも、「一つのテーマを軸にしながら、世界観を少しずつ横に広げている」という点で共通しています。

多様性のある投稿をどう作るか?企業アカウント向けの考え方

ここまでで、「多様性が大事なのはなんとなくわかった。でも、実際の投稿にどう落とし込めばいいのかが難しい」と感じた方もいるかもしれません。そこで、企業アカウントが投稿の幅を広げるときの考え方を、もう少し具体的に整理してみます。

イメージとしては、アカウント全体の投稿をいくつかの役割に分けて考えるとわかりやすくなります。たとえば、「自社の専門情報」「専門分野に関連する少し広い話題」「人の温度が伝わる内容」「業界の最新情報」「最終的なセールスにつながる案内」といったように、役割ごとに投稿を組み立てていくイメージです。

歯科医院であれば、症状や治療法の解説、治療例といった「核心の情報」は非常に重要です。ただし、それだけに偏ると、「お知らせばかりのアカウント」に見えてしまいます。そこに、スタッフの日常の様子や、院内の雰囲気が伝わる写真、患者さんとのちょっとしたエピソード、歯に関するニュースへの院長コメントなどが加わることで、一気に「人が見えるアカウント」に変わっていきます。

建設会社であれば、施工事例や技術解説に加えて、使っている資材や木材の話、職人さんのこだわり、現場での裏側、家づくりに関する素朴なQ&Aなども投稿していくと、興味の入口が広がります。「家を買う予定はまだないけれど、ものづくりを見るのが好き」という人にも届きやすくなるからです。

こうした投稿をバランスよく混ぜていくことで、アカウント全体としての多様性が生まれます。一つひとつの投稿を完璧にしようとするよりも、「1ヶ月を通して見ると、いろいろな角度から情報が出ている」という状態を目指すほうが、現実的で続けやすいと思います。

支援事例:留学エージェントと求人ポータルがうまくいった理由

留学エージェントのクライアントでは、「多様性を意識した投稿」を増やしたことで、Xからのアクセスが大きく伸びました。留学制度の解説や手続きの流れといった「核心の情報」に加え、実際に留学した方の体験談、現地の学校や街の様子の写真、無料カウンセリングや留学フェアの案内、現地業者訪問のレポートなどを織り交ぜることで、「制度の話だけのアカウント」から、「留学の空気感まで伝わるアカウント」に変わっていきました。

動物病院の求人ポータルサイトでは、動物病院の新着求人や更新情報だけでなく、業界ニュースやフリーペーパーの案内、動物の写真なども投稿するようにしました。その結果、動物医療に関わる人だけでなく、「動物が好き」という広い層にも届きやすくなり、フォロワーは3,000人を超え、Xからのアクセスが検索流入を上回る日も出てきました。

どちらの事例にも共通しているのは、「求人」「制度説明」といった「仕事ど真ん中の投稿」だけで終わらせず、ユーザーの興味の周辺にある話題を丁寧に拾っていったことです。その積み重ねが、多様性のあるアカウントをつくり、結果としておすすめ表示の増加につながりました。

フォロワーが少なくても「おすすめ」に乗るための考え方

私は定期的に、協会の会員企業向けにSEO対策やSNS運用の講義を行っています。その中で、SNS初心者の方にも必ずお伝えしているのが、「いきなりバズを狙わない」ということです。最初のうちは、フォロワーが少ないのは当たり前です。その段階で大事なのは、「いまいるフォロワーと、きちんと関係を深めていくこと」です。

具体的には、1ヶ月の投稿を振り返ったときに、「自社の専門情報」「関連分野の話題」「人の温度が伝わる内容」「業界ニュースや最新情報」「セールスにつながる案内」が、ざっくりバランスよく並んでいるかを見ます。カレンダーに書き出してみるのも良い方法です。「人の顔が見える投稿がほとんどないな」と感じたら、まずは週に1回でもスタッフ紹介や日常の一コマを増やしてみる、といった小さな調整から始めます。

また、Xでは、短い動画やショート動画の扱いが年々大きくなっています。長い動画でなくても構いません。セミナーの一部分や現場のワンシーンを切り出して、15〜30秒程度の短い動画として載せるだけでも、テキストだけの投稿とは違う形で目に留まりやすくなります。私自身も、セミナー動画の切り抜きを日々投稿していますが、短時間で数千回再生されることも少なくありません。

プロフィールの書き方や、サイトとの導線も重要です。プロフィール文に何をしている人なのかを一行でわかりやすく書き、固定ポストに「一番読んでほしいコンテンツ」へのリンクを置いておきます。自社サイトのほうにも、ヘッダーやフッターにXのリンクを目立つ形で設置しておくと、サイト訪問者が自然にフォローしてくれる流れが生まれます。ダイビングスクールのクライアントでも、この導線を整えたあと、フォロワー増加のペースが倍近くになりました。

SNSとSEOの共通点:E-E-A-Tが高いアカウントは伸びやすい

私はこれまで、全国各地でSEOセミナーを延べ2000回以上行ってきました。その経験から強く感じているのは、検索で評価されるサイトと、Xで伸びるアカウントには、共通点が多いということです。

実際に現場の様子を見せているアカウントは、それ自体が「経験の証拠」になります。専門的な知識をわかりやすく解説している投稿は、「この人は本当に詳しいんだな」と感じてもらえるきっかけになります。講演や取材、メディア掲載などを適度に紹介していると、「権威性」のサインにもなります。そして、プロフィール、投稿内容、自社サイトの情報が矛盾なくつながっており、長く発信を続けているアカウントは、「信頼できる情報源」として扱われやすくなります。

SNSも検索エンジンも、根底にある発想は同じです。「ユーザーにとって信頼できる情報を、できるだけ上のほうに出したい」。その視点で自分のアカウントを眺めてみると、「どこを直せば良いか」が見えやすくなります。

今日から見直せるポイント

最後に、今日からでも軽くチェックできるポイントをまとめておきます。

1ヶ月分の投稿を振り返りながら、
・自社の専門情報だけでなく、その周辺の話題や人の温度が伝わる内容も出せているか
・何を見ても「宣伝」に見えてしまう状態になっていないか
・ときどき動画やショート動画も混ざっているか
・プロフィール文を読んだだけで「何をしている人かわかる状態」になっているか
・自社サイトからXへの導線がわかりやすく置かれているか
・週に数回は投稿できているか
・自分からも他のアカウントにコメントやいいねをして、関係性を育てているか
といった点を、一つずつ見直してみてください。

これらを意識するだけでも、数週間から数ヶ月のあいだに、インプレッションのグラフが少しずつ変わっていくはずです。

まとめ

Xのアルゴリズムは、「関係性」「反応」「初速」、そして今回お伝えしてきた「多様性」を組み合わせて、どの投稿・どのアカウントをおすすめに出すかを決めています。

とくに企業アカウントの場合、「商品の情報だけ」「キャンペーンのお知らせだけ」に偏ってしまうと、どうしても埋もれやすくなります。むしろ、世界観を少し広げて、ユーザーの興味に寄り添いながら、多様な角度から投稿していく企業ほど、SNSでも検索でも強くなっていきます。

今回ご紹介した事例や考え方、投稿の組み立て方を参考にしながら、まずは1〜2ヶ月、無理のない範囲で試してみてください。地道な取り組みに見えるかもしれませんが、SEOと同じく、時間をかけて続けていくことで、必ず「やっていてよかった」と思える結果につながっていくはずです。

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