最終更新日:2025年12月6日 執筆:SEOコンサルタント 鈴木将司

「X(旧Twitter)のハッシュタグをどう使えば、検索で上位に出てくるのか?」というご質問をコンサルティング中に聞かれることがあります。多くの方が、「ハッシュタグをたくさん付ければ、そのぶん露出も増えるはずだ」と考えています。

しかし、実際の運用データを見ていくと、ハッシュタグの「つけ過ぎ」が逆効果になっているケースが少なくありません。ハッシュタグは、正しく使えばX内検索での「発見されやすさ」を大きく高めてくれる一方で、使い方を間違えると「スパム的なアカウント」と判断され、ユーザーにもアルゴリズムにも信用してもらえなくなるリスクを抱えています。

この記事では、私自身のコンサルティングの現場での経験に、米国のSNS専門メディアや最新の調査結果、そしてGoogle公式が示している「キーワードの扱い方」の考え方を組み合わせながら、「ハッシュタグでX内検索の上位表示を目指す方法」を解説していきます。

なぜ今「ハッシュタグ戦略」が重要なのか?

Xは、かつてのような「気軽なつぶやきの場」から、「リアルタイムで情報を探すための検索エンジン」のような役割を持つようになってきました。
ユーザーは、ニュースだけでなく、「大阪 万博 混雑」「タクシー求人」「名古屋 弁護士」「新宿 整体」といった具体的な言葉をXの検索窓に入れ、自分に関係のある投稿やアカウントを探しています。

海外のマーケティング調査では、ハッシュタグを戦略的に活用することで、X上での表示回数やエンゲージメントが増えるという結果が繰り返し報告されています。つまり、Google検索で上位表示を目指す「SEO」があるように、Xの中でも「検索から見つけてもらうための工夫(X SEO)」が必要になっているということです。その中心にあるのが、今回のテーマであるハッシュタグの戦略です。

世界の「当たり前」は「ハッシュタグは少なめ」

私がこのテーマを本格的に研究し始めたとき、最初にやったのは「自分の感覚をいったん横に置き、世界中の専門家が何と言っているかを徹底的に調べること」でした。
米国のSNS運用ツール企業やマーケティング専門サイトの記事を読み込んでいくと、X(旧Twitter)については、ほとんどの専門家が「1〜2個の関連性の高いハッシュタグに絞るべき」と述べていることがわかります。中には、X自身が「1投稿あたり2個以内」を推奨していると紹介している記事もあります。

つまり、かつて一部の書籍などに書かれていたような「ハッシュタグは付けられるだけ付けたほうがいい」という考え方は、現在のグローバルなベストプラクティスからは外れてしまっているのです。

私自身の失敗から学んだこと:独自理論だけでは続かない

正直に言うと、私自身も昔は「自分の感覚」を信じすぎていた時期がありました。SEOの世界でも、SNSの世界でも、「自分はこう思う」「自分のやり方が正しいはずだ」と思い込んでしまい、他の専門家の意見にあまり耳を傾けていませんでした。

その頃を振り返ってみると、不思議なことにクライアントの成果も頭打ちになり、新しい相談も減っていきました。「なぜだろう?」と改めて世界の情報を調べ直すと、自分のやり方がいつの間にかベストプラクティスからズレていたことに気づいたのです。

それ以来、私は必ず複数の海外の専門家や企業の情報をチェックし、「5人中4人以上が同じ方向性を示しているなら、それが今の標準的なやり方だ」と考えるようになりました。ハッシュタグについても同じで、世界中のプロが「2個まで」「関連性を重視」と言っている以上、日本の中小企業や個人の発信者の方にも、その方針をベースにお伝えするのが、一番成果につながると感じています。

ハッシュタグは「検索キーワード」であり「看板」でもある

ハッシュタグは、X内検索における「キーワード」であると同時に、ユーザーから見たときの「看板」のような役割も担っています。
たとえば、「#タクシー求人」と検索する人は、タクシー業界の仕事を探している人です。「#高山祭り」で検索する人は、高山祭に関する情報や写真が見たい人です。ハッシュタグは、その人がいま何を求めているのか──つまり「検索意図」のヒントそのものです。

ここで大事なのは、付けたハッシュタグが、その検索意図とどれだけきちんと結びついているかです。まったく関係のないハッシュタグをたくさん並べてしまうと、「何でもかんでも引っかけようとしている、信頼できないアカウント」という印象を与えてしまいます。ユーザーにも、アルゴリズムにも、どちらにも好かれません。

この構図は、Google検索の世界で私たちが長年見てきた「キーワードの詰め込み」とまったく同じです。Googleは、ページ内に不自然なほどキーワードを羅列する行為を「キーワードスタッフィング」と呼び、スパムポリシーで明確に禁止しています。

ハッシュタグの付け過ぎは、言ってみれば「SNS版キーワードスタッフィング」です。量よりも、意図に合った少数精鋭のタグを選ぶほうが、長期的には確実にプラスになります。

「人の役に立つコンテンツ」が評価される

ここで少しSEOの話に寄り道します。Googleは「ヘルプフルコンテンツシステム」という仕組みを通じて、「人の役に立つ、独自の価値を持ったコンテンツ」を評価する方針を公式に示しています。

この考え方は、Xのハッシュタグ戦略にもそのまま当てはめることができます。つまり、「アルゴリズムをごまかすためのハッシュタグ」ではなく、「ユーザーが本当に知りたい情報に、できるだけ早くたどり着けるようにするためのハッシュタグ」にすることが重要だ、ということです。

私のクライアントの中には、「自社の業種や地域と、本当に関係のあるハッシュタグを2個だけに絞ったところ、すぐには大きな変化がなくても、数ヶ月後にはフォロワーの質が明らかに良くなった」という事例が複数あります。単なる数合わせではなく、「この情報を待っている人」にきちんと届き始めた結果だと言えます。

何個つけるのが良いのか?「2個前後」に落ち着いた理由

では、実際には何個くらいのハッシュタグを付けるのが良いのでしょうか。先ほどご紹介したように、海外のSNS専門家やデータ分析の結果を見ると、「Xでは1〜2個のハッシュタグを付けた投稿が、最もエンゲージメントが高くなりやすい」という結論が繰り返し出ています。

私自身も、複数のクライアントのアカウントで、「ハッシュタグを10個前後つけていた時期」と「思い切って2個に絞った時期」を比べてみました。すると、多くのケースで、次のような傾向が見られました。

インプレッションの数だけを見れば、極端な差はないか、むしろ2個に絞ったほうがわずかに多いくらいです。しかし、いいねやリポスト、プロフィールへの遷移、フォローにつながる率は、ほぼすべてのアカウントで「2個に絞った時期」のほうが高くなりました。つまり、大事なのはハッシュタグの「数」ではなく、「本当にマッチした2個を丁寧に選べているかどうか」だということです。

「話題性」を少しだけ意識したハッシュタグ選び

ここまで読むと、「では毎回、業種名と地域名の2つをハッシュタグにしておけば良いのだな」と感じる方も多いと思います。業種×地域のタグはたしかに強力で、基本的な軸としておすすめできます。

ただ、それだけだと「いま話題になっているテーマ」には乗りきれません。海外のマーケティング記事でも、「トレンドやライブイベントに関する人気ハッシュタグをうまく取り入れることで、投稿のリーチが大きく伸びる」と指摘されています。

たとえば、大阪万博の時期であれば、「#大阪万博」と自社サービスに関連する話題を組み合わせて投稿する。沖縄に新しいテーマパークがオープンしたタイミングなら、「#テーマパーク」「#沖縄旅行」といったタグと、自社の宿泊施設やツアーを結びつける。地元のお祭りや季節のイベントがあれば、「#高山祭り」「#◯◯祭り」のような地域イベントのタグを使い、地元のユーザーにリーチしていく。

私のクライアントでも、旅館・ホテル・観光関連のビジネスでは、このような「地域イベント系のハッシュタグ」を上手に活用することで、X内検索からのアクセスやフォロワー数が着実に増えたケースが多数あります。

最後にモノを言うのは、やはり「エンゲージメント」

ここまでハッシュタグの話をしてきましたが、どれだけタグを工夫しても、それだけで検索上位が保証されるわけではありません。なぜなら、Xが最も重視しているのは、最終的には「ユーザーの反応=エンゲージメント」だからです。

いいね、リポスト、コメント、保存、プロフィールへの遷移、動画であれば最後まで見てもらえたかどうか──こうした行動の積み重ねが、「この投稿は価値がある」と判断されるかどうかの決め手になります。SNSに関する多くの研究でも、「検索からの露出や表示回数は、エンゲージメントの高さに比例する」という結論が出ています。

X内検索も例外ではなく、適切なハッシュタグを付けていても、ユーザーの反応が少なければ上位表示は難しくなります。逆に、「反応率の高い投稿」は、ハッシュタグが少なくても自然と検索露出が増えていきます。これはGoogle SEOとも同じ構造です。Googleも、特許や公式情報の中で、クリック率や滞在時間など、ユーザーの行動シグナルを重視していることを示しています。

結局のところ、「良い投稿」「適切なハッシュタグ」「反応をもらいやすい設計」という三つがそろって初めて、X内検索での上位表示が安定していきます。

エンゲージメントを増やすための投稿の工夫

SNS初心者の方ほど、「とりあえず投稿して終わり」になってしまいがちです。しかし、それだけでは反応はなかなか増えません。私がクライアントに提案し、実際に成果が出ている方法の一つは、投稿の冒頭で「質問」を投げかけることです。「大阪万博、皆さんはどう感じましたか?」「こんな出来事があったのですが、同じ経験をした方はいらっしゃいますか?」といった問いかけがあると、読んだ人は自分の意見を書きたくなります。

また、「あなたの意見を聞かせてください」「皆さんの事例も教えてください」といった一文を添えるだけでも、コメントが増えやすくなります。Xの公式情報でも、コミュニティとの会話を増やす投稿を推奨する内容が紹介されています。

さらに、画像や動画を混ぜるだけで、エンゲージメントが2〜3倍に増えるケースも珍しくありません。地域のイベントや業界のニュース、季節の話題などを織り交ぜ、「今このタイミングで話題になっていること」と自社の専門分野をうまく結びつけていくと、自然と反応が増えていきます。

アルゴリズムは「アクティブなアカウント」を好む傾向がありますので、内容の重い投稿ばかりでなく、1〜2日に1回は軽い近況や一言コメントを混ぜていくのもおすすめです。

ハッシュタグ戦略で成果が出たケース

動物病院の求人ポータルを運営するクライアントでは、以前は「#求人 #転職 #動物病院 #獣医 #新卒 #中途採用…」と、10個近いハッシュタグを毎回付けていました。しかし、インプレッションも反応も思うように伸びませんでした。

そこで、思い切って「#動物病院求人」と「#動物看護師求人」という2つに絞ってもらいました。すると、投稿を見た人がプロフィールを開いてくれる割合が約2.5倍に増え、フォロワーの増加ペースも月あたり約1.8倍に伸びました。

新宿の整体院では、「#新宿整体」と「#腰痛改善」の2つだけにしぼり、地域のイベントや街の風景の写真も混ぜながら投稿していきました。その結果、「新宿 整体」というキーワードでX内検索をしたときに、常に上位に表示されるようになり、X経由の予約も月10〜15件ほど安定して入るようになりました。

ダイビングスクールのクライアントでは、「#ダイビングスクール」と「#海の生物」の2つを基軸にし、イルカなど話題になりやすい海の生き物の写真や動画を投稿しました。地域の船旅や周辺観光の話題も加えていったところ、「イルカ」「海の生物」「ダイビングスクール」といった複数の検索ワードで上位に表示されるようになりました。

ハッシュタグの「やってはいけない」使い方

逆に、ハッシュタグの使い方を間違えると、せっかくの投稿が台無しになってしまうこともあります。

ひとつは、10個以上のタグをずらりと並べてしまうケースです。ユーザーから見るとスパム的に見えますし、アルゴリズムからも「質の低い投稿」と判断されやすくなります。また、投稿の内容とほとんど関係のないタグを付けると、「釣ろうとしているアカウント」という印象を与えてしまい、信頼を失う原因になります。

トレンドタグに何でもかんでも乗ってしまうのも危険です。一時的な露出は増えるかもしれませんが、「このアカウントは結局何の人なのか」が分からなくなり、専門性や一貫性が失われてしまいます。同じ業種名のタグだけを機械的に何度も繰り返すのも、アルゴリズムから「同じ投稿の繰り返し」とみなされ、かえって露出が落ちる可能性があります。

ハッシュタグは、本来「ユーザーの検索ニーズに対して、正しい情報へ案内するための目印」です。「なんとなく目立つための飾り」ではなく、「必要としている人を、きちんと連れてくるための案内板」だと考えると、自然と使い方が変わってきます。

E-E-A-Tの考え方は、ハッシュタグ戦略にも生きてくる

Googleが公式に示しているE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)は、実はXにもそのまま当てはまります。
現場の写真や動画は、そのアカウントが実際に活動していることを示す「経験」の証拠になります。自分の業種に関する解説やノウハウを発信していけば、「専門性」が伝わります。メディア掲載や受賞歴、セミナー登壇などを適度に紹介すれば、「権威性」の要素が加わります。そして、プロフィールや投稿内容に一貫性があり、誇張のない丁寧な表現を続けていくことで、「信頼性」が高まっていきます。

ハッシュタグも、このE-E-A-Tの枠組みから考えると、「この投稿は本当に、そのタグを付けるに値する内容か?」「そのタグで検索した人が見たとき、役に立つと思ってもらえるか?」という視点が自然に生まれます。そうすると、不要なタグを減らし、「この2つだけは必ず大事にする」という軸が見えてきます。

まとめ:ハッシュタグ×投稿内容×エンゲージメントの3本柱

X内検索で上位に表示されるためには、ハッシュタグだけをいじっても不十分です。ハッシュタグで「誰に向けた投稿か」をきちんと示し、投稿内容の中身でユーザーに価値を届け、エンゲージメント設計で反応をもらいやすくする。この三つを同時に整えていくことが、X内検索で安定して見つけてもらうための近道です。


 
特にハッシュタグは、昔の知識のまま運用してしまうと、大きな機会損失につながります。2025年現在のベストプラクティスは、「1〜2個の、よく選ばれたハッシュタグ」です。そのうえで、地域のイベントや業界のニュースなど「話題性」を取り入れながら、ユーザーが思わず反応したくなる投稿を増やし、専門性と一貫性のある情報をコツコツ届けていけば、Xは中小企業にとって非常に強力な集客チャネルになります。

私がこれまでコンサルティングをしてきた実感として、私は「Xは中小企業がもっとも成果を出しやすいSNSのひとつだ」と確信しています。ぜひ今回の内容を参考に、今日から「ハッシュタグSEO」を一歩ずつ試してみてください。派手な変化ではなくても、数週間、数ヶ月と続けるうちに、「あ、確かに変わってきた」と感じる瞬間が必ず訪れます。

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